カーブドアイボリーは昔から好きでずいぶんいろいろな物を扱いましたが、素晴らしい出来の物でも、ブローチのピンは99%が金ではなくて、金属の物が使われています。
これは当時、価格の安い物だったということです。
同じ細工物でも金細工のエリート職人とは、工賃の差がもの凄くあったということなんです。
カーブドアイボリーは、ドイツのスイスと国境を接する山間地の村で作られているので、工賃が安かったのでしょう。
冬は雪が積もる地域だったので、冬の間の生活費を稼ぐ目的で作られるようになったのかも知れません。
でも、その繊細で美しい彫りを見ていると、豊かな自然の中で経済的には貧しくても、精神的には豊かな生活をしていた人たちの仕事ぶりが感じられるのです。
単にお金を稼ぐだけではなく、良い物を作ろうという誇りと優しい気持ちが感じられるのです。
カーブドアイボリーにはドイツで彫られた森の中の鹿、馬、犬などを彫ったとても繊細な彫りの物と、主にフランスで作られた花のモチーフの物があります。
フランスのディエップでも優れた象細工が多く制作されており、現在もディエップの美術館には多くの優れた作品が収蔵されています。
ディエップは港町だったために良質の象牙が手に入りやすかったせいもあるようです。
その他には、ストーンカメオの代用品として作られた象牙のカメオも作られています。